食物アレルギーをおこさないために

離乳食を始める前に〜アレルギーを起こさないために〜

小児科:太田原宏子

改訂第一版:2017.07.25

1.離乳食を開始する頃

赤ちゃんが離乳食を開始するのは、なめらかにすりつぶした状態の食物を、さじなどを使って口に入れても舌で押し出さずに飲み込むことができるようになる時期、5〜6ヵ月頃が適当です。

それまでの時期は、消化管の働きや免疫のしくみが未熟な時期です。アレルギーの原因となる性質が高い食品を、十分加熱せずに沢山摂取すると、食品のアレルギー性を下げないまま体に取り込む事となり、アレルギーになることも考えられます。また、赤ちゃん自身が直接食べなくても、アレルゲン物質をお母さんが摂取するなどし、母乳を介して取り込む経口感作や、あるいは気が付かないうちに皮膚などについた食品を介して取り込む経皮感作など、様々な要因から、アレルギー反応を起こしてしまう事もあります。

乳児期にアトピー性皮膚炎があると、食物アレルギーの発症を促す事がありますので、保湿などのスキンケアを十分に行うことは、とても大切です。乳児期早期に重症のアトピー性皮膚炎(AD)と診断された場合も、医療機関において、ステロイド外用薬やスキンケアを基本とした治療を受け、生後6か月までにADの皮疹をきちんと治した状態となれば、アレルギー専門の医師の管理のもと、加熱鶏卵をごく少量から摂取することで、鶏卵アレルギーの発症を予防し、皮疹の消失した状態を維持できる、新しい治療も始まっています。しかしこの方法は、アトピー性皮膚炎のない乳児や、単に家族歴でアトピー性皮膚炎があるというケースでの予防効果はまだ証明されていません。逆に、早い時期での加熱度の低い食品摂取でショックを起こした事例もあるようです。

離乳食の初期は無理することなく、おかゆや野菜類をごく少量、様子を見ながら徐々に進めましょう。2回食になる頃から、量や種類を増やしていく事が必要です。この時期までは母乳が主な栄養源ですから、離乳食の量が少なくても栄養面での心配はありません.離乳食の開始は、遅らせてはいけませんが、推奨時期よりも早期(5〜6か月)の鶏卵開始には、ご注意ください。また、小麦や牛乳など、他の食品の早期摂取する効果も確認されていません。

注意が必要なのは、一旦、アレルギーになってしまった場合です。摂取すればするほどアレルギー症状が強くなるので、気になる症状がある場合は、きちんと診断してもらい、その結果が陽性であれば除去が必要になります。しかし除去は永続的に行う必要はなく、消化管の機能の成熟と共に耐性がつくことが多いので、成長に合わせて除去は段階的に解除されます。
卵アレルギーを恐れるあまりに、卵の摂取の開始をむやみに遅らせても、アレルギーの予防効果はありません。生後7〜8か月頃から卵黄1個〜全卵は3分の1が目安です。

2.離乳食をはじめてしばらっくたった頃(2回食〜3回食の頃)

離乳を開始して1か月を過ぎたころ(7〜8か月頃)から、離乳食は1日2回に、固さは舌でつぶせる程度にし、9か月頃からは、1日3回にしていきます。

卵白に含まれる「オボムコイド」は強いアレルギーを起こしやすいので、1歳未満では原則、卵白単独では与えないようにしましょう。卵黄が最も安全ですが、全卵を与える場合でも、必ず加熱・加工したものを適した時期に、目安量をきちんと守って摂取しましょう。繰り返しとなりますが、食品を低アレルゲン化するためには、「しっかり加熱」する事はとても重要です。
この時期には、今までの離乳食や、経母乳・経皮感作により、気づかないうちにアレルギーになっている赤ちゃんも一定数あるかも知れません。すでにアレルギーを発症している赤ちゃんは、症状が悪化したり、場合によりショック症状を起こす事もありますので、離乳食は通常よりゆっくりと進める必要があります。食べたあとに吐いたり、下痢や発疹の症状、咳が出たりぜいぜいする、あるいは、徐々に皮膚がカサカサと荒れてくるなどの時はアレルギーかも知れません。心配な症状があるときは、小児科を受診して、まずアレルギーの検査を受けましょう。

アレルギーがある食品は、除去と併せて、代替食品を利用する事も考慮します。除去にあたっては十分な問診を行い、本当にアレルギー症状が出たもの、スコアが基準以上である食品に限るべきで、安易に多くの食品を除去するのは好ましくありません。成長に必要な栄養が不足してしまいますし、離乳食の開始が遅れると、アトピー性皮膚炎のある乳児ではアレルギーが悪化する場合もあります。また、母乳だけをいつまでも飲んでいると、発育障害や重い鉄欠乏性貧血をおこし、長期的に神経の発達にも影響が見られることもあります。

3.調理方法における注意点

忙しい日々の中ですが、加熱度にばらつきが出る可能性のある調理法は避けましょう。食材は鮮度の良いものを用い、まな板や調理器具などは使用後に乾燥させるなど、衛生面にも配慮が必要です。油を使用する場合は、少しずつにしましょう。揚げたり、炒めたりする調理方法は油の摂取量が多くなるため、風邪気味、発熱時など、体調の悪いときはやめておきましょう。

「栄養不足とならないように留意しながら、かつ安心・安全性を求める」、これはなかなか難しい事ですが、離乳食の知識やコツを身につけて、どうすれば安全で、滋養のある離乳食を進められるのか、学んでいけると良いですね。それぞれのご家庭にあった無理のない進め方で、安全に、食べる楽しさ、食べる力を育んでいただければ幸いです。
分からないこと・気になることがあれば、お気軽に小児科外来にご相談ください。

授乳・離乳の支援ガイド(離乳編)より