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はがね・たたら・よろい
鉄の町・安来と語り継がれるほど、地域発展に大きく貢献。鉄のテーマミュージアム「和鋼博物館」が誕生し、歴史の発信基地として過去の伝統を今に継承。また毎年刃物祭りが盛大に開催され、毎年多くの人手で賑わったりと、今もその名残を至る箇所で感じることが可能です。


●はがね・たたら・よろい

■たたら

いにしえの昔から行われていた古代製鉄法が「たたら製鉄」。
「たたら」とは土を固めて作った古代の溶鉱炉のことで、この中に砂鉄と木炭を交互に入れ三日三晩炉を燃やし続け、砂鉄を溶かし、ケラと呼ばれる鉄の塊を作るのです。

砂鉄を溶かす「たたら製鉄法」で、一番重要な役割を果たすのが大量の炭。そしてこの大量の炭を得るには広大な雑木林が必要となります。つまり「炭」という字は「山」と「灰」から出来ているように、山を丸ごと灰にし、始めて「炭」を得ることが出来るのではないかとつい考えていまいますが・・・。

ちなみに、1トンの「ケラ」を造るのに、その6〜7倍の量の木炭を必要とします。 従って、背後に広大な中国山脈を抱える奥出雲地方でこのたたら製鉄が盛んに行われたのは、大量の水と風化した花崗岩質の山がたくさんあり、良質の砂鉄が採れた上に、炭焼きが盛んだったことが大きな要因となったのは言うまでもありません。

ところで、山の木の大量伐採は自然破壊を引き起こすのでは?、という心配があろうかと思いますが、大丈夫。雨の多い中国山地では、数十年単位での樹木の回復力を見越した自然循環の法則に従った炭焼きが行われています。その分、手入れされた広大な面積の森林を必要としたのはいたしかたありませんが・・・・。自然の中で生活しておった先人の知恵はホントたいしたものですね。

■ケラ

「たたら」から作り出される鋼の元となる鉄の塊を「ケラ」と呼び、その1/3が最上質の玉鋼となります。 
砂鉄とは、花崗岩などに1〜2%含まれている鉄分が風化作用によって母岩から分離したもので、大別すると次の2種類に分けることが可能です。

真砂砂鉄=花崗岩を母岩とし、チタン含有量が少なく溶解温度が高い。赤目砂鉄=閃緑岩を母岩とし、チタン含有量が多く溶解温度は低い。炭素の吸収力が大きい。

このうち「玉鋼」に変身するのは、真砂砂鉄で、一方の赤目砂鉄は銑鉄(鋳物)として活用されることが非常に多くなります。この砂鉄の採取は「かんな流し」という手法で行われていました。それは水の流れを利用し、比重の違いにより水路の底に砂鉄だけを沈殿させるというもので、「そうめん流し」の大きい仕掛けを連想してもらえれると、ある程度の想像がつくと思いますが・・・。

良質な砂鉄をベースに、「たたら製鉄法」によって造り出されたハガネのことを玉鋼と呼びます。それ故に、名刀と謳い称される切れ味鋭い日本刀には、すべて玉鋼が使用されているのを知っていましたか? 

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ところで、一口にハガネと言っても自動車の外装等に用いる極軟鋼からドリル等に用いられる高速度鋼まで、その用途によって13種類に分類され、それは炭素の含有量、もしくは合金にした場合の添加物の種類と量で決定されます。

基本的には、炭素含有量の0.035%〜1.7%がハガネであり、それ以下を純鉄、それ以上を銑鉄と言い、炭素含有量が多くなるほど硬くてもろい鉄が出来てしまいます。

特徴としては、硬くて強くて適度な粘り気がある。そして、リンや硫黄などの不純物が少ないほど良質とされています。要するに、ハガネとは焼き入れをした際、硬く締まってしまう性質を持った鉄のことなのです。

たたら製鉄法の技術を今に引き継ぎ、「ヤスキハガネ」のブランド名で特殊鋼の生産をしているのが日立金属安来工場です。

この工場は特殊鋼の製造にかけては世界屈指の技術と品質を有していると評されています。

■「ヤスギ」と「ヤスキ」

「安来」の正式呼称は「ヤスギ」であり、安来の「来」は「ギ」と濁るのですが、ハガネのブランド名の方のファーストネームは「ヤスキ」であり、濁りません。本来ならば、安来で作ったハガネであることから「ヤスギハガネ」になるはずなのですが、実際は「ヤスキハガネ」として世界中に通用しています。なぜ「ヤスキ」なのか・・・、その理由は定かではありませんが、あえて推測すれば、「そのハガネは濁りのないもの」と、最高級ブランドを自負した作り手のこだわり・職人魂がこのような表現につながったのではないでしょうか。

■特殊鋼

鋼は、用途によって13種類に分類されるとお伝えしましたが、この内、極軟鋼・軟鋼・硬鋼・最硬鋼の一分を普通鋼と言って大量消費の鉄材とし、残りの特殊な用途に使う鋼を特殊鋼と呼んでいます。

参考までに、特殊鋼には、ステンレス鋼・炭素工具鋼・高速度鋼・耐熱鋼等が含まれています。

■刃物鋼(炭素工具鋼等)

日本全体での刃物鋼の生産総量と、ここの工場で生産する刃物鋼だけの生産量を比較した場合の比率は低いのですが、しかしながら最高級刃物鋼としての国内シェアーは約80〜90%を占めています。

これは、この工場の方針でもある、最高級の鋼しか製造しないという頑ななまでのこだわり。まあ、それが世界的にあつい信用を得ている由縁で、「ヤスキハガネは世界屈指のハガネである」と自慢できる根幹ともなっています。まさに安来が誇る文化・伝統、われわれ市民も鼻が高い限りです。

しかし世界最高級なるが故の悩みもあって、刃物にする場合の加工が非常に難しいと言われています。なにせ、日本刀を作るのと同じく、生半可な技術ではハガネの性能が生きないのです。よって「ヤスキハガネ」は優秀な技術を持った職人の手にかかってこそ、初めて切れ味鋭い最高級の刃物に変身することができるとされています。そのぶん価値も上がる反面、値段の方も結構お高く張るのですが・・・。

■「安来はハガネのまち」にて候

日立金属安来工場は、刃物鋼に留まらず多種多様な用途の特殊鋼を生産しています。そして市内に多くの関連企業を抱え、昔から多くの市民にも親しまれており、この工場が築き上げた「ヤスキハガネ」という世界的なブランド名も手伝って、安来は「安来節のまち」であると同時に、「ハガネのまち」でもあるという確固たる地位も築き上げてきたのです。



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